クレーマーを撃退して、スカッとしたと思ったら
著作者: Vive La Palestina
学生時代地元のコンビニでアルバイトをしていた時の話である。当時私は地域でも有名なクレーマーおばさんに付きまとわれていた。
私の態度が良くなかったのか、はたまた私の外見が気に食わなかったのかとにかく私が勤務している時に現れては罵詈雑言をまくしたてて帰っていくのだ。
始めは我慢しようと思った、揉め事が大嫌いだからだ。しかし私のハートはガラスというか、シャボン玉で出来ている様なものなので日に日に衰退していく。
辞める事も視野に入れたが、人手が足らず難しいと言われた。
そんなある日の事、私もいい加減限界が来てしまった。
その日は早朝から天気が悪く、通勤客が早くから溢れていたのでお店は大混雑していたにも関わらずお店には私一人。そこにクレーマーおばさんが現れたのだ。
ゴジラが襲ってきているその後方から、モスラがやってきた様な緊張感。
おばさんは私を一瞥すると、店内を物色し始めた。
しかしその日はこれで終わりではなかった。不運とは重なりに重なるものである。超常連・ガテン系兄さんが登場したのだ。
彼らは10数人で来店し、凄まじい量の弁当・惣菜を買っていく。お店としてはありがたいものの、朝のピーク時に被るとかなり大変な存在だ。
通常であればもっと遅くに来るのだが本日はどういうわけか早めにやってきた様だ。状況的には、想定し得る最悪のシチュエーションである。
ゴジラとモスラに続いて、キングキドラも一緒に来ちゃった感じだった。
私の心臓は高鳴っている、だがここで逃げ出す訳にはいかない。
一人一人慎重に捌こう。大丈夫だ。いつも通りやればきっと問題ない。
そしておばさんの番がやってきた。レジに来たおばさんは私にトドメを刺すつもりなのだろう。もうレジにカゴを置く直前からキレていた。
袋に入れるのが下手だ、レジが遅い。彼女にとっては内容は何でも良かったに違いない。ただ気に食わないヤツを怒鳴りたいだけなのだ。それでも心を無にしてなんとか、おばさんのレジを終える。
しかしおばさんの口撃はまだ終わらない。レジのそばに張り付いているのだ。
次のお客様が困っている。「こちらへどうぞ」と促し、会計を始めるがおばさんの悪意が止まる事はなかった。
そして私に限界が訪れる。身体のどこかで何かが壊れる音がした。
キレて喧嘩をしようとした訳ではない、極度の緊張とストレス、そして寝不足が相まって倒れそうになってしまったのだ。
そんな時である、思わぬ角度から助け舟が飛んできた。ガテン系の兄さんだった。
ガ「ふざけんじゃねえぞ、ババア!」
ガ「皆忙しいんだよ、邪魔すんなら早く出てけ!!」
ガ「もうこの店くんなバカヤロー!!!」
一瞬、静寂。
あまりの勢いと威圧感に私もおばさんも言葉が出てこない。
だがきっと居たたまれなかったのだろう。おばさんは、何やら捨て台詞を吐いて出て行った。兄さんの完全勝利だった。
こうして止まっていた流れがまた緩やかに動きだす。しばらくするとガテン系兄さん達の番になった。
私「あの、ありがとうございました。」
私は精一杯御礼を言った、そして心の中で「いつも面倒くさい」などと思っててすいませんと精一杯の謝罪をする。
するとお兄さんは少し照れた様子で「まぁ気にすんな」と切りだすと
ガ「いつもすまんな。がんばれよ!」
と自分が買った缶コーヒーを差し出して颯爽と去っていった。
涙が溢れそうになる。おばさんが去った安堵感なのかお兄さんの言葉が嬉しかったのか涙の源泉は分からない。
ただススで汚れた後ろ姿が、とてもカッコよく見えたのは確かだった。
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後日、クレーマーおばさんとガテン系兄さんが親子だと知り驚愕したのは内緒だ。
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