断腸の思いで、私は彼と別れた。
人生には出会いがあり、そして別れがある。
二人はいつも一緒だった。どこに行っても何をやってもずっと一緒だった。
ただそこにいる。それだけで安心して、心の何処かで慢心して日々を過ごしていた。
彼には夢があった。それを私に語った事は無いが私はずっと前から気付いている。
彼は空を飛びたいんだ。大空を舞って、新しい世界をみたいんだ。
でも私にも夢がある。それは二人でこれからもずっと一緒に過ごすこと。
どちらが正しいのだろう、どちらが間違っているのだろう。
どちらもきっと正解だ。だが、二人の想いが交じる事はその後一度もなかった。
夢を追いながらも、一緒に過ごす方法は?それも一つの正解なのかもしれない。
だが彼にとってその選択はどうしても選べないものだった。自分の夢を見続けながら、私との未来を支えていく自信がなかったから。
私も私だ。彼を繋ぎとめておく事が出来ない、根っから弱い人間だったんだ。
私は自分の胸の内をさらけ出せない。もしかしたら泣き叫んで、縋りつけば良かったのかもしれない。少しでも早くそうすれば何かが変わったかもしれない。
でもそうしなかった。いやそうできなかった。カッコよく沈黙を選んだんじゃない、現実からただ目を背けていただけだ。
そして、二人は別々の道を歩き出す。
「ケガ、ないように」
冬の凛とした空気の中そうつぶやく私を背にして、彼はゆっくり旅立った。
流した涙を私に悟られない様に、振り返ってむせ返る未練に絡め取られない様に最後に見せた小さな格好つけだったのかもしれない。
人生には出会いがあり、そして別れがある。
私は想う。相手の未来を願っているからこそ別れるべき時もあるのではないのかと。
お互いがお互いを想って、歩き出すその一歩はもしかしたら酷く孤独で凍えるように冷たいかもしれない。
だが必死に振り返りたくなるその作用を強引に引き剥がし、私は前を向かなければならない。もう時間は戻らないのだから。
これからちょっぴり寂しい生活になるけどきっと楽しかったあの頃の様に、笑って振り返れる時がくるから。
二人は歩き出す。歩く道は違ってもずっとあなたは笑っていると心の底から信じてる。そして、いつの日かまた会おう。
それでは聴いて下さい。
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日常お題ったー
「別れ」「歌」