定食屋で出会ったグローバルおじさん
「世はグローバル、日本は今世界に目を向けなければならないんだ」
これは先日、たまたま立ち寄った地元の定食屋で知らないおじさんから飛び出した言葉である。
突然で恐縮だが、私は定食屋が大好きだ。
と、言うより白飯が好きなので、食事を摂る際は必ずと言っても良いほど
定食屋が選択肢に入ってくる。そしてあの何とも言えないローカル感も好き。
そこで冒頭の一言である。ローカルの極みみたいな場所で、グローバルの何たるかを言われても正直あんまりピンと来ない。
ちょっと唐突過ぎたので「おばちゃん、お水おかわり!」としか言えなかった私だが、おじさんは表情を変えることなく中空を見つめ何やら語り始めた。
おじさん「なぜ若者は外に出ようとしない?チャンスはそこかしこに転がっているだろ」
私「・・・・もぐもぐ」
おじさん「それにしても若者たちには意欲がない。終身雇用制度に胡座をかいた世代も同じだ、何も変えようとしていない。そんなクサイものに蓋をする様な時代で、本当にこのまま日本が生き残れると思うか?」
おじさんの視線は中空を仰ぎ、まるで聴衆に話しかける様な厳かさで語り掛けてくる。
私「パクパク、ごくごく」
おじさん「それに日本の商品のアレはなんだ。確かに品質は良くなっているのかもしれないが、全然斬新さがない。昔はもっと良かった。毎日の様に新しいものが現れ、成長を実感出来た。でも今は新しいものは海外から来るものばかりじゃないか」
おじさん「本当につまらない世の中になったもんだ、反吐が出る」
おじさんは怒り心頭と行った風に、語気を強めながらしかし毅然と中空に声を張り上げる。
おじさん「だから日本はダメだ」
おじさん「本来こうあるべきだ、日本は」
おじさん「日本はあらゆる観点から見ても、もう全然ダメ」
おじさん「日本ダメゼッタイ」
ーーー20分後。
私「ごちそうさまでした。」
結局食事をしていた計30分間。おじさんはほとんど途切れる事なく日本について語っていた。
後半日本ダメしか言ってなかったけど、すごく日本が好きなのだろう。だから敢えて苦言を呈しているのだ。これくらい恥ずかしげもなく、熱くなる姿勢は見習わなければならない。
おじさん「それに日本は人口も少なく、財布のヒモも硬い。やはりこれからは海外に目を向けるべきなんだ!!」
お会計をしようと立ち上がろうとする私を気に止める事もなく、まるで怒鳴るように大声を出した。
周りの常連さんも、またかと呆れた様に見ている。彼もまたココの常連なのだろう。
まぁ何にせよ中空ばっか見てないで、まずこっちに目を向けなよ。