世界は広くて、色々な人がいる。
私は休日外出しない事が多い。だから大体の週末は自宅でゆっくりしているのだが
元来衝動的に行動するタイプだったりもするので深夜になって突然、車をすっ飛ばして夜景を見に行ったりする事も稀にある。
その日、私は海沿いのベンチに座って夜景を楽しみながらコーヒーを飲んでいた。
すると近くのベンチにカップルがやってきたではないか。ボーっとし過ぎてて気付かなかった。
週末の夜景スポットにはカップルが多い。普段はそんな人達の邪魔にならないようにキビキビと行動し、寂しく隅っこにいるのだが
今私はこんな状況になっているので
動くべきか否か、迷っていた。
しかしどうやら死角に隠れているので、私の存在には気付いていないようだ。
今考えれば、この瞬間にさっさと去るべきだったがそこは判断力が鈍い私である。
どうしようと思っている内に、状況が一変した。彼が「愛の告白」を始めてしまったのだ。
正直焦った。本来、愛の告白は二人だけのものである。こんな私でも愛の告白の一つや二つしたことはあるがそれを人に聞かれるなど想像を絶する恥辱。
だがここは見ての通り、袋小路。この状態だとここを去るにしても彼らに恥ずかしい思いをさせるに違いない。ちなみに逆側は海なので彼らの邪魔をせず、この場から消えるとすればもはや海に飛び込むしかないのだが、どうしよう。
このままここにいるべきか、海の藻屑として消え去るべきか。どちらが正しいのか。
神はかくも無慈悲である。
だが話の内容的にもうゴールは近そうだ。こうなったら、なるべく聞かない様に体育座りで静かにしていよう。そう心に決めた瞬間、彼の口から信じられない言葉が発せられた。
「この気持ちを歌います」
これは、やばい!!
告白だけでも盗み聞きして申し訳ないのに、歌とかホントもうダメ。
しかしもう今さら「実はいたんすよ、俺」的な感じで出て行く訳にもいかない。なんかすごい罪悪感、この罪悪感を歌いたいくらいだ。
感想を端的に言えば、それはそれは素敵なものだった。
お世辞にもプロの様な歌唱力はない、だが無骨で荒々しくそれでも彼女への想いが詰まった「魂の歌」がそこにあった。
彼は歌い終え、その余韻に浸るまでもなく
「好きです、付き合ってください」
改めて告白した。
一瞬の沈黙。静かに佇む、彼と彼女、そして全然関係ないこの私。
「ごめんなさい」
!!!
「やっぱり息子の友達とは付き合えないの」
!!!??????
ムスコノトモダチ????
その後、衝撃のあまり固まっているといつのまにか二人は去っていたので彼らがどうなったかは分からない。
人間は千差万別だ。その人一人ひとりに様々な愛のカタチがあって、何を愛するかは人の自由。
中には友達のお母さんを好きになってしまう事だって、あるかもしれない。
それに「息子」と聞こえたが、もしかしたら「ムスカ」とかを私が聞き間違えた可能性もゼロではないが
世界は広くて、色々な人がいる。そんな事を改めて思った秋の終わりだった。
続編はコチラ→続・世界は広くて、色々な人がいる。 - 自省log
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