焼肉を考案してくれた偉大な人を抱きしめたい。
以前からずっと思っていることがある。
「焼肉を考えた人は偉大」
ということだ。
切られた肉を焼き、なんかのタレをたっぷりつけて存分に味わう。
シンプル・イズ・ベスト
これ以上ないほどに動物的な食べ方だが、それでもうまいんだから仕方ない。
思えば、私の人生は焼肉が中心だった。
幼い頃から安楽亭が近所にあったものだから、お祝い事はもっぱら焼肉屋さんで催されていたからだ。
運動会の後に、連休初日の夜に、誕生日、クリスマス、お正月。
生活のすべてが焼肉だと言っても過言ではない。すべての達成は焼肉に紐付いていた。
私は家族とともに焼肉とともに成長してきた、そう言い切れる。三段論法的に見れば、「焼き肉=家族」だと言っても差し支えないくらいである。
中学生になり活動範囲が広がると、さらに新しい出会いがあった。「牛角」だ。
当時まだ今ほどチェーン展開しておらず希少性の高かった牛角は、安楽亭よりちょっぴり高くて、なんか照明とかも暗くて、アイスがめっちゃうまいみたいな焼肉屋さんだった。
正直言って、目からウロコがボッロボロ落ちた。あまりの落ち具合に眼球も一緒に落ちたかと思うほどの高級感。
「焼肉=安楽亭=家族」であり、いわば世界のすべてだった私にとって牛角はイノベーティブな存在だったのだ。暗いことでこんなにも高級感が出せるのかと。肉を食うことの楽しみが倍増したなと。
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズは世界にイノベーションを巻き起こしたが、私にとってのイノベーションは紛れも無く牛角なのである。
月の少ないお小遣いや部活の遠征でもらった昼食代を少しずつ貯めて、“高級感のある”牛角に通い詰め、さらに焼肉にのめり込んだのは言うまでもない。
だから、今も焼肉屋に行くとテンションが上がる。もう30代を目の前にした立派なアラサーなのだが目の前がキラキラするのだ。
なぜそうなるのかは分からない。子供の頃の原風景がそうさせるのか、はたまた人間の動物的な本能が肉を欲しているからか。その理由は分からない。
だが、私は胸を張って言える。
「焼肉が大好きだ」と。
大人になり多くの焼肉屋さんを知って、安楽亭も牛角も素敵なほどリーズナブルだってことを知ったけど、それでも大好きだと。
私は抱きしめたい。
焼肉を考案した偉大な人を。発祥が日本なのか韓国なのか詳しいところは分からないけれど、それでも力一杯抱きしめて「ありがとう」と言いたい。
そう言ったあと、おもむろに焼肉を食べたい。それが私の夢なのである。
なんかよく分からないけど、1皿1万円の牛タンをおごることになった。 pic.twitter.com/CuI5Tr8ryy
— Ryohei Kono (@tube_ryo) 2016年2月24日