自省log

毎日5分をムダにしたな。と思えるブログ

胸を張って歩いていたら、丸の内OLにガン見された。

私は最近外を歩くとき、胸を張って歩くようにしている。その様はまるで”闊歩”である。

「自信はモテを加速させる」

そう聞いたことが、この試みの始まりだった。自信ある男がモテるのではない、自信を伴って堂々とした立ち振舞ができる男こそがモテるのだ。
私は昔から自分に自信を持てなかった。ならば、さも自信が溢れるような顔をして生き、自分を騙すのが先決ではないか。そんな打算から私は胸を張って歩くようになった。
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あくる日の午前中、私は東京・丸の内を歩いていた。定例のアポイントがあったからだ。時間もピッタリ定刻である。
午前中の丸の内は荘厳な静けさで満ち、まるでRPGの勇者になったような感覚を覚えさせた。権威づいた建造物もそんな気分を高めてくれる。

なんでそんなことを思ったかって?朝自宅の半身鏡で見た自分がいつもよりイケている気がしたからだ。胸を張って歩き始めて数日、少しは勇ましくなれたのかもしれない。

イケてると思い込んでいる私は、何でもプラスに捉えることができた。自信溢れる人間は皆そうなのだろうか。
いつも人が多くて面倒な東京の街すら歩くことが楽しい。どこからかやってきたビル風が私を迎え撃つように吹き付けても、この歩みを止めることはできないだろう。

今日は何もかも順調そのもの。それは朝、窓を開けた時から気付いていた。毎度起動が遅くてうんざりする社用のウィンドウズすら起動が早くて笑ける。こういう時は何かいいこともあるはずだ。

そういえば先ほどから感じる視線はなんだろう。いつもと違い、正面をしっかり向いて歩いているからその効果が出ているのかもしれないな。

その視線の主は、綺羅びやかな丸の内OLだった。前方から数人、タイトなスカートからスラリと伸びた脚を高めのヒールに収め、コンクリートで丁寧に舗装された道をコツコツと音立てながらこちらに向かってきている。
普段なら視野にさえ入れてもらえない私だが、やはり自信を持って歩く男は注目をされるのか。

1歩、2歩。少しずつ距離が縮まっていく。私はいかにも「興味などありませんよ」と目線をズラしつつも、更に胸を張った。わずかでも自信あり気に見せたい、小さな虚栄心だった。
そんな私の右側を彼女らは通りぬけ、颯爽と甘い香りを残して去っていく。すれ違う直前の目配せと微笑みは忘れられない。

「これがモテ期!」

私は人知れず、そう呟いた。こんな急に来るとは思わなかったが、モテ期的な"何か"がやってきていることはもう間違いないのである。数年以上、この道を歩いているが丸の内OLにあんな笑顔を向けられたのは初めてなのだから。住む世界が違うと思っていた彼女たちが瞬く間に現実感を帯び始めた。ここがモテ男のスタートラインなのだろう。
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私は胸を張り、再び歩きはじめた。心なしか空がいつもより青く感じる、風が色付いたように爽やかに感じる。今まで見えなかったものが見えるように感じる。
今日は何もかも順調そのもの。それは朝、窓を開けた時から気付いていた。毎度起動が遅くてうんざりする社用のウィンドウズすら起動が早くて笑ける。こういう時は何かいいこともあるはずだ。

でもこの時はまだ知る由もなかった。OL達が見ていたのは私ではなく私の「社会のウィンドウズ」だったことを。