自省log

毎日5分をムダにしたな。と思えるブログ

新幹線で仁義なきヤーさんに包囲された。

大阪出張を終え、上りの新幹線で帰路についていたときである。ゆったり帰りたかった私は自腹でグリーン券を購入し、喜び勇んで新幹線に乗り込んだ。
本日は直帰を命じられているし明日は休みだったので大阪-東京間で小旅行気分を味わって帰ろう、そんな腹づもりだったのだ。だがそんな円満はその5分後、いとも容易く打ち破られることになる。こんな状況になっていたからだ。

f:id:juverk:20140225144343j:plain

何故こんなことになってしまったのか全然分からない。前方、後方、隣の席。どっからどう見ても"カタギ"とは思えない風体の方々で埋めつくされているのだ。
屈強な恐竜の群れに、しがないコバエが一匹、何の手違いがあればこんなことになるのか。JR全線を手当たり次第問い詰めたい気持ちでいっぱいだった。

車内は物々しい静けさに満ちており、生きた心地はしなかったが、とにかく生き抜くため半ば呼吸を止めて存在感を消す。数日の出張で疲れが溜まっていて体を伸ばしたかったし、大好きな焼肉弁当を食べたかったが我慢しなければならないだろう。

昔何かで任侠はカタギに対して優しいと聞いたことがある。もし彼らが任侠であれば一般市民たる瑣末なバンビが餌を食べるくらいなんとも思わないかもしれないが、そこはビビリな私なので余計なことはしない。
微動だにせず座り続けよう。もちろんリクライングなどもっての外だ。一瞬でも不快な思いをさせてみろ、私は永遠にリクライニングし続けるはめになるのだから。
___

それから30分くらい経っただろうか。状況がにわかに変わりつつあった。何やら宴会が始まってしまったのである。
さすが皆さん漢(おとこ)の中の漢(おとこ)ばかりなので摂取するアルコール量も尋常じゃなく、話す声も大きい。
映画とかネットの影響で、カタギを怯えさせないように公共の場では厳然と佇んだり、クッキーを焼いたりしているものかと思っていたがそんな空気はまるで皆無。

私はそうなってからもまるで石ころ帽子を被ったように気配を消していたが、隣に座っていた「今どきそこまで巻くかね」ってくらい"パンチ"の効いたお兄様が近くの同志との会話で体を波のように揺らしながら笑うので、その度に肩らへんに肘がぶつかってとても痛い。

「むぐっ!」

どんなに気配を消していても、衝撃を受ければ声が出てしまうのだ。謝罪など求めるべくもないが基本的にそんなものは一切ない。
この時点で私はちょっと涙目になっている。慣れない土地で疲れた体を引きずって乗ったグリーン車で、その筋の人に包囲され肘で打たれる。いみじくも神はいつも意地悪なのである。するとまた隣のパンチが、体を振り乱し私の肩周辺に肘をぶつけた。

!!!!!
もうガマンできない!!

私は今まで耐えに耐えてきた。だがもう限界である。

「カタギをなめるなよ!!」

そう心のなかで嘯きながら、まっすぐ立ち上がり一目散に喫煙室に逃げ込んだ。
__

その後私は念のため6車両くらい離れた安息の地で、一つの答えにたどり着くことになる。一言でいえば

ガマンすること

考えてみれば、東京まで残り1時間半くらいなのである。ただそれだけ耐え続ければいいのだし、もしかしたらヤーさんも名古屋で降りてくれるかもしれないのだ。席に戻り、耐え続ける覚悟を決めた。

「絶対に耐えてやる。カタギの意地を見せつけるぞ!!」

そう自分に言い聞かせながらグリーン車に向かって歩き出す。

私は勢いよくグリーン車の扉を開け、愕然とした。こんな状況になっていたからだ。

f:id:juverk:20140225144402j:plain

その後、東京まで一人デッキで咽び泣いた。

[asin:4584391726:detail]