自省log

毎日5分をムダにしたな。と思えるブログ

コンビニで虎と狼に挟まれて、カエルみたいになった。

こちら読みました。
http://lair-onett.hatenablog.com/entry/2014/02/08/103432

私は学生時代コンビニでアルバイトをしており、前に以下の記事を書いたのだが
クレーマーを撃退して、スカッとしたと思ったら - 自省log
この記事は地域でも有名なクレーマーおばさんの話。私が働いていたコンビニはクレーマーが少ない非常に平和なコンビニだったのでクレーマーおばさんの印象が強く記事を認めたのだ。
しかしそんな「THE 平和(ピンフ)」みたいな我がコンビニでも少数ながらかなり手厳しいクレーマーがいたことは事実なので、本日はその辺について書きたいと思う。
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その日は冬の寒い日で、夜半から強い雨が降り注いでいた。当時私が大学生の身分を濫用し夜勤で働いていたときの話だ。
このコンビニは深夜一人体制を敷いている。単純な業務だけなら問題もないのだが一度問題が起こってしまうと業務が滞りまくるというと綱渡り的な体制。過去にそのリスクを何度もオーナーへ進言していたが、問題が極端に少ない店だったので当然の如く却下されていた経緯がある。

そんな折り、私のミスを引き金に一通のクレームが来ることになってしまった。お店がちょうどピークに差し掛かった頃、怒髪天を衝く勢いで電話が入ったのだ。

「ふざんけんなよ!箸が入ってねーだろうが!」

声から察するに中年くらいの男性。ぶっきらぼうな声で開口一番、吐き捨てるようにそう怒鳴り散らした。
先ほどレジが混雑したときに、箸を入れ忘れてしまったらしい。

私は「大変申し訳ございません、以後徹底いたします。」と即座に謝罪し、話を進める。電話に出ている今も会計を待っているお客さんが私を呼び続けているので、一刻も早く接客に入りたかったからだ。
それに入れ忘れてしまったことは全面的に私が悪いけれど、自宅であれば箸もあるだろうと思い、その言質を取って速やかに電話を切ろうと弱々しい声で画策する。

しかしそれを聞いたか聞かずか、彼は冷徹な声で言った。

「今から家まで箸持ってこい

!!!!

私は「家に箸ないのか」そう思いながらも、ビビって追求することができない。制服の裏側で汗がにじみ出る音が聞こえた。

「申し訳ございません、今このお店、私一人でして…」

私はその瞬間、冷静な判断ができていなかった。本来であれば、オーナーに連絡して対策するのが得策で、お店を空けるなど言語道断。
しかしあまりに突発的だったことや、お客さんが大挙をなしていることからパニックになり、無意識に家まで届けることを受け入れてしまっていた。
蛇に睨まれた蛙。いや、まるで前門の虎と後門の狼に挟まれた憐れなカエルの如く、頭がうまく働かない。気分としては正にこんな感じだ。

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Photo by Satoru Kikuchi
お客さんが大勢待っている旨を伝え虎の電話番号を聞いて、すぐ接客に戻る。
どうすれば良い、どうすれば。一度オーナーに連絡し、判断を仰ぐしかない。そう思い隙あらば電話に向かいたかったがお客さんが途切れなかったので、まずは後門の狼達を捌くことを優先する。それにあと一息でピークも終わるのだ。早く、早くッ!!
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幸いにもその数分後には潮が引くように、狼達も去っていったので一目散にオーナーへ電話を入れる。しかし、出ない。
もしかしたら寝ているのかもしれないので、とにかく待ってみよう。1分、3分、5分。無慈悲に時は過ぎるが、いくら待っても一向に折り返しがこない。
あんの、たぬきジジイッ狸寝入りしてやがる!!

もう一度たぬきたるオーナーに電話をかけようと思ったその瞬間、電話が鳴った。虎だ。
彼もガマンの限界だったようで激しい咆哮が飛んでくる。もうダメだ、あんなたぬき待っていることなんて出来やしない。私は虎の家に向かうことを決意した。

「分かりました、準備して向かいます」

そう伝え、お店を一旦クローズしてとにかく虎の家に駆け出す。虎の家は、走れば徒歩2~3分のところにあり、近かった。
しかしふいな急風で傘が折れてしまったので大雨の中ずぶ濡れになりながら、虎の元へひた走った。箸を念のため5膳、あとは迷惑をかけてしまったお詫びに自腹で購入した飲み物と温かいお弁当を携えて。

虎の家に到着し、全力で謝罪しながら箸と弁当を手渡す。もうずぶ濡れでめちゃくちゃだが何にせよ入れ忘れてしまったのは私であり、遅れてしまったのは事実なのだ。

すると虎はさっきと打って変わって、借りてきた猫のような顔をしながら言った

「スマン!入ってたわ。箸」

えぇぇー!!!!??
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虎は軽く謝ると、早々に引っ込んでしまったので私はトボトボと帰路についていた。強い雨の中傘もささず歩き、ずぶ濡れになりながら一体私は何をやっているのか。何故冷静になって虎をなだめることが出来なかったのだろう。この行為、正しく蛙の行列が如しである。

雨が無情にも私の顔を強く打つ。この顔にしたたるものが雨なのか涙なのかもう判別もつかない。
「蛙の面に水」とよく言うけれど、私の面の皮はそんなに厚くないのだ。

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