自省log

毎日5分をムダにしたな。と思えるブログ

怖い話のお陰で心に大きな傷を負った。

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数年前、友人宅へ数人で泊まりに行ったときの話である。その日私達は独身の男だけ寂しく連なって語り合う「お泊り会」を開催し、皆ダラダラと平穏な休前日を謳歌していたのだが、ある一人の友人が

「ちょっと怖い話があるんだけど…」

と切り出したばかりに、私はその後心に大きなキズを追うことになる。順を追って話そう。

彼は饒舌なタイプで、場の空気を作るのも上手い。またその時ちょうど丑三つ時だったことも相まってか話を聞いていた私達も背筋が寒くなる。恐らく彼の醸しだす雰囲気に呑まれていたのだろう。

こういう話が始まると不思議なもので、他の友人も追随するように自らの霊体験を語り出した。先ほどの友人が作り出した空気を伴って雰囲気は正に百物語。
私も過去に霊体験らしきものをしていたが、やはり怖いものは怖いので途中トイレに行きたくなりつつも行くのをためらって話を聞いていた。

そんな時である。突然、窓の方から「ドサッ!!」という異音が響いたのだ。その音に反応して皆一斉に体が強張った。
部屋の構図はこんな感じになっており

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皆、音の正体を探るため窓の方を注視しているが金縛りにあったように誰一人として動けない。

怖い話をすると霊が近寄ってくるという聞いたことがある。場の発する「気」が霊を吸い寄せるのだろうか。
その詳細は分からないが、窓の外の"招かれざる客"は今正にカツカツと高めの音を立てて部屋に近づいてきているのである。
友人が青い顔しながら「なんだよ!」と恐れ慄いた声を上げ、そう言うや否やピタッと足音が止まった。

一瞬の静寂。空調の音と誰かがツバを飲み込む音がこだまする。そして次の瞬間、窓がいきなり開いた。

!!!??

ここまで来るともうパニックだった。「怖い話をすると、霊が来る」と聞いたけどまさかこんな物理的な感じで訪問してくるなんて思いもしないのだから。
皆、口々に悲鳴をあげる。私も腰が抜け、身体が上手く動かない。

すると一番近くにいた勇気ある友人が「うわぁぁ!!!!」と声をあげ、窓の方に拳を繰り出した。
冷静に考えてみると霊に物理的な攻撃が当たるわけもないのだが、あの状況では仕方がないだろう。突き出した拳が窓に当たるとその"何か"も驚いたのか、もんどり打ったように身を翻しベランダを駈けずり回る音が響く。

私達は意を決して外の様子を窺うために、窓をかぶりつくように見た。

!!!!?

猫だった。
_____

その後、恐怖感から解放された私達は誰ともなく大きく息をつき、一人ひとり床に座り始め、先ほどまでの重苦しい雰囲気から一転、私達にまた平穏な時間が流れ始める。

だが私は中々振り向くことができなかった。否、振り向く勇気がなかった。
さっき腰が抜けた当たりからずっとズボンに違和感を覚えていたのだが、今しがた下を覗きこんでその答えを知ったからである。
私の内から滲みでた"招かれざる客"が私のズボンに大きな染みを作っていたのだ。

怖い話は、怖いものを呼び寄せる。そんなこともあるから肝試しとか百物語なんて絶対にするもんじゃない。
だがそれ以上に友人が発する白い目線の方がよっぽど怖かったし、心に大きな傷を作ったのである。
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