自省log

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あなたとコンビに、セーラーじいさん

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id:syurawさんのこの記事
ボーリング場で「セーラーおっさん」に遭遇した - Ust's Diary
を読んで、思い出したので書く。

私は学生時代、コンビニでアルバイトをしていた。
このコンビニは私立の女子高が近く、朝夕はとにかく女子高生が店内に溢れている正しくバラ色の職場。

毎朝瑞々しく咲き誇るバラが、青かった私の胸を幾度となくときめかせてくれたことを今も鮮明に覚えている。しかしそんな綺麗なバラに紛れて、ラフレシアが舞い込んでくることが多々あった。それが今回の主役"セーラーじいさん"である。

セーラーじいさんは読んで字の如く、セーラー服を華麗に着こなすおじいさんだ。
上に貼り付けた画像やリンク先のおっさんに比べて年齢は高く、詳細は分からないが見た目は70代くらいだろうか。小柄で細身なタイプ。職業その他は一切不明で地域住民も情報を持っていない謎のじいさん。

確かに初めて見た時は驚きを隠せなかった。
しかし人間というのは不思議もので、しばらくすると見慣れてしまう。
それは私や地域住民だけでなく常連の女子高生達も同様で、入学した当初は皆セーラーじいさんを見て奇異の目を向けるものの、徐々に慣れていきその年の終わりには「セーラーじいさんと絡みだす」という流れが伝統的に繰り返されていた。
そんな伝統がそうさせたのか、はたまたこのセーラーじいさんが一言も喋らないことが功を奏したのか通報などの騒ぎになったことは一度もなかった。

オーナー曰くこの現象は開店した当初から続いており、女子高生がセーラーじいさんに慣れる光景をみて時間の経過を感じていたらしい。
この店の人間にとってセーラーじいさんとその周囲を取り巻く環境は、1年の終わりを知らせる"なくてはならない存在"だったのだ。

「お店を開店した時からずっとセーラー服を着てこの店を見守ってくれている。この店とセーラーじいさんは切っても切れない関係なんだ」

そう語るオーナーは、まるで自分の父親を自慢する子供の様に笑顔だった。

そんなある日、事件が起こる。
PTAから正式にセーラーじいさんを排除しようという圧力がかかったのだ。
何でもセーラーじいさんに怯えた学生が道に飛び出して交通事故を起こしてしまったらしい。今までは問題がなかったので、捨て置かれていたがそうなってしまっては後の祭り。警察から強い注意を浴びたじいさんは、セーラー服を脱いで普通のじいさんに戻ったが最後。コンビニにも姿を現さなくなってしまった。
_____

それから約半年。ちょうど今と同じ冬の寒い季節にこのコンビニは閉店することになる。実のところ経営は長らく傾いていたが、オーナーの意向でなんとか継続していたらしい。
だがこのタイミングで閉店するという事はもしかしてセーラーじいさんが来なくなったから…。私を含め、店員は皆そう思ったが誰も口には出せない。

最後の一週間は在庫一掃セールを開催した。たくさんの常連さんが来てくれ、皆名残惜しそうにお店の想い出を語ったが肝心のセーラーじいさんは現れない。商品が減り、ひどくガランとした店内を眺めながら「閉店前に一度、挨拶しておきたかったな」とオーナーは残念がっていたがあんな事があった後では望むべくもなかった。

しかし、皆が諦めかけていた閉店の2日前。何の前触れもなくその時は来た。
セーラーじいさんが来店したのだ。封印したはずのセーラー服を着て、セーラーじいさんが帰ってきた。

皆は嬉々としてセーラーじいさんに駆け寄る。"セーラー服を着たじいさんをコンビニ店員が囲んでいる"端から見たら、何とも奇妙な光景だがその時の私達には関係ない。
いつも来てくれて、ありがとう。」ただその一言が言いたかったからだ。

オーナーは涙ながらに

「今まで本当にありがとうございました。」

そう握手を求める。セーラーじいさんは気恥ずかしそうに少し微笑むと握手に応え「お疲れ様」と初めて口を開いた。

長い時間だった。今に至るまでで初めて聞く言葉、声。
そこにいた全員が、その瞬間に把握した。ずっと勘違いしていた。

「セーラーじいさん」はじいさんではなく、ばあさんだった。

Myこれ!クション おニャン子クラブBEST

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「セーラー服と機関銃」オリジナル・サウンドトラック

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